よみもの
ラベンダーのビオトープ
2019年 4月 24日

南仏プロヴァンスの夏はラベンダーの季節です。紫色の絨毯を敷き詰めたようにラベンダー畑が広がり、芳香に覆われます。
南仏プロヴァンスには、Lavandula angustifolia(便宜的に野生ラベンダーをLavandula vera、栽培の真正ラベンダーをLavandula angustifoliaまたはLavandula officinalisと表記されています)、Lavandula latifolia(スパイクラベンダー) 、そしてLavandula angustifoliaとLavandula latigoliaの交配種で一般的に「ラバンジン」と呼ばれているLavandula × intermediaの3種のラベンダーが生息しています。
そして、これら3種のラベンダーはそれぞれ日当たりの良い山の斜面に、標高によって種類を見分けることができるほど、律義に互いのテリトリーを尊重しながら生息しています。
まず、標高1200m以上の高地には野生のラベンダーが自生しており、その下の1200m~1000mあたりではこれと同じ種の真正ラベンダーの栽培が行われています。
標高700m~800mの地帯には、上から「母」である真正ラベンダーと、下から「父」であるスパイクラベンダーにサンドイッチ状に挟まれて、両者の交配種であるラバンジンLavandula x intermediaが生息しています。
これらのラベンダーの生息圏から離れ、地中海に面した珪質土の陵にしばし密生して見られるのが、ファミリーの中の異端児ラベンダーストエカスLavandula stoechasです。ウサギの耳のような苞葉(ほうよう)のついた花が特徴で、高温多湿の日本でもよく育ちます。ケトン類(フェンコン、樟脳)と1,8-シネオールが多く含まれているので、私たちがイメージするフローラルなラベンダーの香りとは全く異なります。
地球温暖化の影響とも言われていますが、近年、プロヴァンスの真正ラベンダーは害虫による立ち枯れ病が蔓延してしまいました。より冷涼な他の国や地域での栽培が行われています。