花粉症には1,8-シネオール

花粉の飛散がピークを迎え、アレルギー性鼻炎(鼻水、鼻づまり、くしゃみなど)に悩む人は少なくありません。国民病とも言われて久しいですが、「花粉症が原因で4分の1の企業で生産性低下」「花粉症の小学生、4人に1人「勉強に集中できない」気づかぬ親多く」(毎日新聞2024年3月5日および2月23日)など、花粉症が経済や生活に与えるダメージは大きいようです。

 

1,8-シネオールは別名ユーカリプトールとも呼ばれるように、ユーカリのすーっとした爽やかな香りがする成分で、アロマテラピーでは花粉対策などにも注目されている成分です。1,8-シネオールは様々なエッセンシャルオイル(ユーカリラジアタ、ユーカリグローブルス、ローズマリー・シネオール、ラヴィンサラなど)に含まれていて、芳香浴や吸入などにも使いやすいのが特徴です。

 

経験的に既に心得ている効果ですが、マウスを使った実験でも1,8-シネオールがアレルギー性鼻炎のマウスモデルにおいて症状を緩和することが確認されました。アレルギー性鼻炎のマウスに1,8-シネオールを点鼻によって投与すると、鼻の掻きむしりおよびくしゃみの回数を効果的に減少させることができたというものです。

 

この実験により、1,8-シネオールがアラキドン酸代謝経路(炎症を起こす酵素の生成過程)を阻害し、炎症性メディエーターの生成を減少させることで、アレルギー反応による炎症を抑制すること、そして、花粉症に関わるTh2型免疫反応を調節することにより、アレルギー反応が緩和されたことが示されました。これらの結果から、1,8-シネオールがアレルギー性鼻炎治療の新たな選択肢として有望であることが示唆されています[1]。

 

アレルギー性鼻炎に対する治療薬は、現在抗ヒスタミン薬と鼻内ステロイドであり、症状を和らげるのには効果的ですが、眠気、集中力の低下、倦怠感などの副作用があります[2]。こうした副作用のない、1,8-シネオールを使用した新たな薬剤の開発が期待されています。

ユーカリラジアタなどのエッセンシャルオイル(もちろん数種類をブレンドしても可)を、お湯を入れたマグカップに数滴たらして吸入すると適度な潤いも加わり、花粉の時期を快適にしてくれます。

 

Reference:

[1]Liu, F.-L., Rong, Y., Zhou, H., Yu, T., Liu, L., Cao, Q., Qin, Z., Qu, L., Liao, X., Jiang, Q., Zhang, N., & Xu, X. (2023). Cineole inhibits the biosynthesis of leukotrienes and prostaglandins to alleviate allergic rhinitis: Insights from metabolomics. Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 234, 115574.

[2]Li, L., Liu, R., Peng, C., Chen, X., & Li, J. (2022). Pharmacogenomics for the efficacy and side effects of antihistamines. Experimental Dermatology, 31(7), 993-1004.