ヘリクリサムと独自の成分

ヘリクリサムは、鮮やかな黄色のポンポン状の花を咲かせるキク科の植物で、主に地中海沿岸地域に自生しています。特にクロアチアのダルマティア海岸やその周辺の島々、イタリアやフランスの沿岸地域、コルシカ島、大西洋沿岸の島々などでよく見られます。

 

植物の名前は、ギリシャ語の「Helios(太陽)」と「Chrysos(黄金)」に由来し、太陽の光に輝く黄金色の花が特徴です。また、しおれることがない花であるため、一般に「イモルテル(Immortelle=不滅の花)」とも呼ばれています。

 

ヘリクリサム属には約500種もの植物がありますが、エッセンシャルオイルを抽出できるのは一部に限られています。その中でも特に重要なのはヘリクリサム・イタリカムHelichrysum italicumです。

 

この植物から得られるエッセンシャルオイルはとても貴重です。満開になる直前に収穫しないと、収油率が急激に低下します。収穫時期は地域によって異なりますが、通常は6月末から7月上旬にかけて行われます。しかし、ヘリクリサムの花は小さくて軽いため、エッセンシャルオイルを得るには大量の花が必要となり、収穫作業は非常に手間がかかります。

 

また、蒸留も非常にデリケートなプロセスです。温度や圧力の調整を少しでも誤ると、香りや品質が損なわれることがあります。ですから、高品質のエッセンシャルオイルを生産できる蒸留所は限られており、特に優れたヘリクリサムのエッセンシャルオイルは市場にほとんど出回りません。流通しているものは非常に高価であり、入手は容易ではありません。

 

ヘリクリサムは古くから、打撲による青あざや腫れの治療に使用されてきましたが、このエッセンシャルオイルに含まれる独自の成分として知られているのが5~12%程度含まれるイタリジオン(ジオン類)です。

 

🌿イタリジオンの作用特性

・抗炎症作用: 打撲や筋肉の炎症を和らげる効果が期待されています。

・抗酸化作用: 細胞を酸化ストレスから保護し、老化防止や皮膚の健康に寄与します。

・血行促進作用: 血液循環を促進し、打撲や青あざの治癒を早めます。

・瘢痕形成抑制作用: 傷跡の形成を抑え、皮膚の再生と回復を助けます。

・抗菌・抗ウイルス作用: 軽度の抗菌作用があり、皮膚感染症の予防に役立ちます。

 

真正ラベンダーLavandula angustifoliaとブレンドすることで、切り傷や打撲の痛みを和らげ、傷やあざの治癒を促進する効果があります。

 

ヘリクリサムの特性成分はジオン類のほかに、酢酸ネリル(30~45%)、γ&ar-クルクメン(8~18%)などです。

 

Reference:

 Sala, A., Recio, M. D., Giner, R. M., Máñez, S., Tournier, H., Schinella, G., & Rios, J. L. (2002). Anti-inflammatory and antioxidant properties of Helichrysum italicum. Journal of Pharmacy and Pharmacology, 54(3), 365-371.

 Salgueiro, L., Pinto, E., Gonçalves, M. J., Pina-Vaz, C., Cavaleiro, C., Rodrigues, A. G., & Palmeira, A. (1997). Antimicrobial activity and chemical composition of essential oils from Helichrysum italicum. Planta Medica, 63(2), 181-183.

 Mastelic, J., Jerkovic, I., Politeo, O., & Radosevic, N. (2005). Composition and antimicrobial activity of Helichrysum italicum essential oil and its terpene and terpenoid fractions. Chemistry of Natural Compounds, 41(1), 35-40.