原料である植物の産地


ローズマリーの植物写真
Rosmarinus officinalis

原料植物の産地 geographical originの表示が必要な理由として、特に植物学的に見て同じ植物(つまり植物学名が同じ)であっても、産地によって成分組成が異なる場合があるからです 。

 

例えばローズマリーRosmarinus officinalisの場合、フランスのプロヴァンス地方、コルシカ、そして北アフリカが主な産地ですが、成分構成は産地によって異なり、したがって適正使用法や使用目的も異なります。

 


Rosmarinus officinalis BS camphor

慣用名:ローズマリー・カンファー

産地:プロヴァンス地方

香り:樟脳の香りが強い

特性成分:カンファー(樟脳)、1,8-シネオール、α-ピネンなど

主な作用特性:  筋肉の緊張をほぐします(皮膚塗布)。

カンファーを多く含むため、神経毒性と肝毒性があります。特に、長時間香りを嗅いでいると気分が悪くなる可能性があり、使用には注意が必要です。芳香浴と飲用には用いません。

 

Rosmarinus officinalis BS 1,8-cineole

慣用名:ローズマリー・シネオール

産地:北アフリカ

香り:染みとおるような爽やかな香り

特性成分:1,8-シネオール、少量のカンファー(樟脳)、α-ピネンなど

主な作用特性:上気道および下気道の炎症を鎮めます。血液循環を促します。肝臓の働きをよくします。

 

Rosmarinus officinalis BS bornyl acetate, verbenone

慣用名:ローズマリー・ベルベノン

産地 :コルシカ島

香り / やわらかみがあり、松脂を思わせる香り

特性成分:酢酸ボルニル、ベルベノン、1,8-シネオール、α-ピネンなど

主な作用特性 / 肝臓の働きをよくします(飲用)。

 

「ローズマリーは肝臓にいい」 とよく言われますが、それはコルシカ島産のベルベノン・タイプと北アフリカ産のシネオール・タイプに該当することです。カンファーを多く含むプロヴァンス地方産のものを内服すれと、逆に肝臓に負担をかけることになってしまいます。カンファーとは防虫剤に用いる“樟脳”のことです。当然、カンファーを多く含むプロヴァンス産のローズマリーは芳香浴にも向きません。

 

ローズマリーのように、植物学的に見てまったく同じ植物 (形態も同じ、学名も同じ) であるにもかかわらず、産地やビオトープの違いによって、成分組成が異なるエッセンシャルオイルのことを 「ケモタイプ Chemotype」 といいます。

 

ケモタイプのエッセンシャルオイルはローズマリーの他に、タイムThymus vulgaris(チモールタイプ、リナロールタイプなど)、ラヴィンサラ Cinnamomum camphora(シネオールタイプ、カンファータイプなど)、バジルOcimum basilicum(メチルチャビコールタイプ、リナロールタイプなど) があります。