安全に健康や美容に役立つアロマテラピーを行うには、品質の確かなエッセンシャルオイル(精油)を正しく使うことです。心身のケアを目的としたアロマテラピー用の精油は、水蒸気蒸留または圧搾によってのみ抽出され、希釈や添加、調整などが一切行われていない100%天然のものでなければなりません。
GC/MS分析や残留農薬検査などによって、エッセンシャルオイルの品質と安全性が科学的に証明され、その一方で、数字には表すことのできない香りの面からもその品質の良さが確証されたものでなければなりません。
また、正確で詳細なラベル表示や分析データがユーザーに公開されているなど、情報開示がなされているかどうかも大切です。
これから購入しようとするエッセンシャルオイルあるいはお手元のエッセンシャルオイルの分析表をもう一度点検していただき、アロマテラピーを安全に行っていただきたいと思います。
「成分バランス」 と 「香り」 はエッセンシャルオイル(精油)の「肉体」と「魂」とも言える部分です。
下記の8項目をチェックしてみてください。
①~⑥はエッセンシャルオイルのボトル(ラベル)で確認してください。
⑦はロット毎の分析表で確認してください。
⑧はご自身の鼻でエッセンシャルオイルの香りを鑑定してください。
① 国際植物命名規約に則った植物学名の表示 → 詳細
ラテン語による「属名」と「種小名」の列記の表示を確認してください。
例)Lavandula(属)+ angustifolia(種)
慣用名だけの表示「ラベンダー」や「Lavender」では、どんなラベンダーなのかわかりません。
② 原料植物の産地の表示 → 詳細
同じ学名の植物でも産地によって成分が異なる場合があります。
③ 原料植物の生育条件の表示 → 詳細
「野生」「オーガニック栽培」「栽培」など。
④ 原料植物の抽出部位と生育段階の表示 → 詳細
蒸留または圧搾する植物の部位や、植物を採取する時期によってエッセンシャルオイルの成分は異なります。
⑤ 精油の作用特性を形成する特性成分とその含有率(%)の表示 → 詳細
工業製品ではない天然の産物であるエッセンシャルオイルは、同じ種類の植物であってもロットが変わっただけで成分やその組成が大きく異なる場合があります。
⑥ ロット番号表記によるトレーサビリティ
蒸留から消費段階までの流通履歴がロット番号によって追跡可能であることを意味します。天然物であるエッセンシャルオイルは、原料が同じ種類の植物であっても、蒸留毎に微妙に成分組成が変わります。したがって、ロット番号を割り振り、トレーサビリティを明確にする必要があります。
⑦ 精度の高いGC/MS分析によるロット毎の分析と情報開示 → 詳細
ボトルの中身がどんな成分で構成されているのかをユーザーは知る権利があります。エッセンシャルオイルに不正がないかどうか、香料としての用途ではなく、アロマテラピー用に抽出されたエッセンシャルオイルであるかどうかなどを見極める重要な科学的データです。
⑧ 香り
品質の良いエッセンシャルオイルは香りがよいという鉄則があります。ご自身で必ず香りをチェックしてください。
本サイトの監修者であるPhilippe Mailhebiauは、1980年代初頭にH.E.B.B.Dというアロマテラピー用のエッセンシャルオイルの品質基準を設けました。エッセンシャルオイルがケアの目的に従って、皮膚塗布のみならず飲用や経直腸投与(坐薬)等、医薬品同様の使い方がなされるアロマテラピーでは、その人体に与える影響と薬理学的な特性を考慮に入れた品質基準の設定が急務であったからです。
香料としてのエッセンシャルオイルの品質基準しか存在せず、そもそも天然のエッセンシャルオイルに品質の違いがあるという認識すらなかった当時としては、この試みは画期的なことでした。
その後研究を進め、1998年にはH.E.B.B.D.をより厳格化し、E.O.B.B.D. Quality Assuranceと改名。分析方法と品質管理の手順と規格を確 立し、ISO9002の認証を取得しました。E.O.B.B.D.とはEssential oils Botanically and Biochemically Definedの略で、植物学的・天然物化学的に同定されたエッセンシャルオイルという意味です。
E.O.B.B.D. Quality Assuranceにより品質を保証されたエッセンシャルオイルには上記の①~⑥の表示項目が記載され、科学的な分析によって内容物を正確に同定することが義務付けられています。エッセンシャルオイルのトレーサビリティ、性質、成分組成を保証する、市場で最も進んだ品質基準です。
また、数字では表すことのできない香りの質もアロマテラピーではとても大切です。鼻の嗅覚受容体がエッセンシャルオイルの香り(芳香分子)によって刺激を受けると、神経末端が神経伝達信号を出し、これが嗅覚神経に伝わって脳に届き、香りは知覚されます。そして、この香りの知覚が思考や感情、気分といった私たちの精神活動に影響を与えることが、さまざまな実験研究を通して明らかになっているからです。