臨床アロマテラピーの可能性を探る ― 伝統と科学の融合がもたらす新しい視点

2025年 10月 17日

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エッセンシャルオイルは、長い歴史を通じて人々の暮らしや健康を支えてきた自然の恵みです。近年では、リラクゼーションやセルフケアの領域を超え、医療・臨床の現場でもその活用が注目されるようになっています。しかし、その一方で「科学的な根拠は十分なのか?」「安全性はどのように担保されているのか?」といった疑問を持つ方も少なくありません。

こうした状況のなかで、「Essential oils for clinical aromatherapy: A comprehensive review」(Vora et al., 2024)は、伝統的な知識と最新の科学的知見を体系的にまとめ、エッセンシャルオイルの臨床応用に関する現状と課題、そして将来への展望を包括的に示しています。
このレビュー論文の結論部分を中心に、内容をわかりやすく紹介します。

品質と標準化が鍵を握る
エッセンシャルオイルの特性は、植物の種類だけでなく、抽出方法によっても大きく変わります。蒸留や圧搾、溶剤抽出など、さまざまな製法によって香りや成分の組成が異なり、それが治療効果に直結します。そのため、品質と純度の確保は望ましい効果を得るために欠かせない要素です。
標準化や認証といった取り組みはまだ発展途上にありますが、安全かつ効果的な使用を支える重要な基盤として、その必要性が高まっています。

多様な健康状態への応用が期待される
抗菌作用、鎮痛作用、抗不安作用、抗炎症作用など、エッセンシャルオイルが幅広い健康状態への対応に役立つ可能性が示されています。臨床試験や前臨床研究も進みつつあり、身体的な側面だけでなく心理的な領域においても、有望な結果が報告されています。
特に、睡眠障害、不安や緊張、呼吸器系の不調、気分障害、吐き気や嘔吐、婦人科領域、ホスピスケアといった臨床領域において、エッセンシャルオイルの応用が広がりつつあることが紹介されています。これらの分野は、今後さらに研究と臨床実践が進むことで、医療現場でも活用の幅が広がる可能性があります。

安全な使用法の普及が不可欠
エッセンシャルオイルを使用する際の安全性への配慮も極めて重要です。副作用や禁忌事項、適切な希釈や使用方法といった正しい使い方を広めることで、不要なトラブルを防ぎ、安心してアロマテラピーを活用できる環境づくりが求められています。

医療との連携による未来
近年では、従来の医療とエッセンシャルオイルを組み合わせる“統合的なアプローチ”への関心も高まっています。補完療法としての位置づけが広がるなか、今後さらなる研究や臨床調査が進めば、医療現場においてもエッセンシャルオイルの潜在力を最大限に引き出せる可能性があります。
今後、治療効果がさらに明らかになり、医療との連携が進むことで、ホリスティックな健康と患者ケアの新たな時代が訪れるかもしれません。

参考文献:
Vora, L. K., Gholap, A. D., Hatvate, N. T., Naren, P., Khan, S., Chavda, V. P., Balar, P. C., Gandhi, J., & Khatri, D. K. (2024). Essential oils for clinical aromatherapy: A comprehensive review. Journal of Ethnopharmacology, 330, 118180. https://doi.org/10.1016/j.jep.2024.118180

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