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カレンデュラはなぜエッセンシャルオイルにならないのか
2026年 4月 6日

浸出油として使われる理由を成分から読み解く
キンセンカ(カレンデュラ)はハーブとして広く知られていますが、エッセンシャルオイルとして見かけることはほとんどありません。その理由はどこにあるのでしょうか。揮発性成分と脂溶性成分という視点から、カレンデュラがどのように利用されてきたのかを整理してみたいと思います。
金盞花(キンセンカ)という植物と暮らしの記憶
キンセンカ(Calendula officinalis)は、庭先でもよく育つ丈夫な花として親しまれてきました。仏花として添えられることも多く、菊などの落ち着いた色合いの中に、オレンジや黄色が加わることで、やさしい彩りが感じられます。
乾燥させた花びらはハーブティーとしても利用されています。穏やかな風味と見た目の華やかさから、ブレンドに少量加える使い方が一般的です。
カレンデュラにエッセンシャルオイルがほとんど存在しない理由
カレンデュラは、芳香をもたらす揮発性成分をほとんど含まない植物です。
一般的にエッセンシャルオイルは、水蒸気蒸留によって揮発性の低分子成分(モノテルペン類やセスキテルペン類など)を回収することで得られます。しかしカレンデュラの場合、これらの成分の含有量が非常に少ないため、蒸留によって回収できる成分はごくわずかです。
そのため、植物の成分を利用するうえでは、蒸留という方法はあまり適していないと考えられます。
カレンデュラの主成分は“非揮発性・脂溶性”
カレンデュラに多く含まれるのは、トリテルペン類、カロテノイド、フラボノイドといった成分群です。
これらはいずれも揮発性が低く、水には溶けにくい一方で、油には溶けやすい性質を持っています。
このような成分の特徴が、カレンデュラの使われ方に影響していると考えられます。
なぜ「浸出油」という方法が選ばれるのか
乾燥した花を植物油に漬け込むことで、脂溶性成分をゆっくりと油に移す方法を「浸出油(インフューズドオイル)」といいます。
カレンデュラに含まれる主要成分は油に溶けやすいため、この方法が自然な選択になります。
このオイルは、スキンケア用のオイル、バーム、クリーム、石けん作りなどに用いられています。
カレンデュラは、肌をやさしく整えるハーブとして広く親しまれています。
キク科特有の成分に注意が必要
カレンデュラはキク科の植物であり、セスキテルペンラクトンを微量に含みます。
これらの化合物は、皮膚上でタンパク質と結合することでハプテン(単体では免疫反応を起こさない低分子化合物が、体のタンパク質と結合することで新たに異物として認識される現象)として働き、免疫系に認識されることで接触性皮膚炎を引き起こすことがあります。
とくに浸出油では、脂溶性成分が油中に移行するため、キク科に敏感な方では注意が必要とされています。
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