■科名:フトモモ科
■抽出部位:葉の付いた枝
■抽出方法:水蒸気蒸留法
■特性成分:
4-テルピネオール(モノテルペン・アルコール類)35~45%
γ-テルピネン(モノテルペン類)10~20%
1,8-シネオール(モノテルペン・オキサイド類)4~6%
スパチュレノール(セスキテルペン・アルコール類)<1%
ティーツリーには、抗菌作用、抗ウイルス作用などに加え、特に優れた抗真菌作用があり、注目されているエッセンシャルオイルです。
オーストラリア北東部のニューサウスウエールズに住んでいた先住民族アボリジニーは、この地域の湿地帯に数多く生育している植物ティーツリー Melaleuca alternifolia の治癒力を古くからよく知り、さまざまな傷の手当てに利用していました。
また、皮膚病や怪我を治す不思議な力があると彼等に信じられていた「魔法の池」は、周りにティーツリーの樹木が茂り、その葉が池に落ち、優れた薬効を持つ成分が水に滲み出していたためではないかと言われています。
英語の慣用名ティーツリー(Tea tree=茶の木)の由来は、キャプテン・クックと共に世界一周航海に旅出た英国の植物研究家・探検家のジョセフ・バンクス卿が1770年オーストラリアに辿り着いた際、ティーツリーの葉をお茶の代わりにして飲んだことからとされています。
20世紀に入ると薬効に関する科学的な研究がなされるようになりました。1925年、シドニーの技術・応用科学博物館で館長を務めるArthur R. Penfold は、ティーツリーのエッセンシャルオイルには当時、標準的な殺菌消毒剤となっていた石炭酸よりも12倍も強力な殺菌消毒作用があると発表しました*。
1930年代、原産国オーストラリアでは、皮膚に対し毒性も刺激性もない理想的な殺菌消毒剤として、ティーツリーは感染症の予防、皮膚病の治療など医療の様々な現場で使用されるようになり、第二次世界大戦ではオーストラリア軍の応急手当キットに加えられるほど需要が広まりました。
戦後、天然のエッセンシャルオイルに代わる合成殺菌剤や抗生物質が開発され、一般に流通するようになると、ティーツリーのエッセンシャルオイルは一時市場から姿を消すことになりました。しかし、60年代に入り化学薬品の副作用が懸念され始め、人々が自然療法に関心を持つようになり、また、抗生物質の効力に耐性を獲得した「耐性菌」の存在が確認されると、天然のティーツリーのエッセンシャルオイルは改めて脚光を浴びるようになりました。近年、医学界からも注目されているエッセンシャルオイルで多くの研究がされています。
感染症に対してはフェノール系のエッセンシャルオイルとブレンドするとより効果的です。
また、最近では花粉症に効果があるとされ、飲用や芳香浴(吸入)などにも用いられています。
・抗菌・抗ウイルス・抗真菌・抗寄生虫作用があります(特に消化器系、生殖器系、上気道、下気道)。
・創傷の化膿を防ぎ、治癒を促します。
・傷が化膿するのを防ぎ、治癒を促します。
・免疫調節作用*があります。
・花粉症の諸症状を鎮めます。
*免疫を暴走させることなく炎症などを鎮める作用。
エッセンシャルオイルの良し悪しを見定めるとき、4-テルピネオールの含有率(%)ばかりに目を奪われないようにしましょう。もちろん主要成分は4-テルピネオールであり、目安となる含有率は35~45%ですが、少しぐらいなら足りなくても効果に影響を及ぼすことはありません。
それよりも完全蒸留されているかどうか、つまり、スパチュレノールなどの微量成分がきちんと抽出されているかどうかも大切なチェックポイントです。確かな治療効果の得られるエッセンシャルオイルは全体の成分バランスが取れていて、香りが良いのが特徴です。
また、このエッセンシャルオイルは4-テルピネオールの含有率を上げるためにさまざまな調整(加工)されている場合もあるので注意が必要です。
Reference:
*A. R. Penfold, “THE ESSENTIAL OILS OF MELALEUCA LINARIIFOLIA (SMITH), AND M. ALTERNIFOLIA (CHEEL),” Journal and proceedings of the Royal Society of New South Wales